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労働者派遣講座 > 労働者派遣の基礎知識 > 【1】労働者派遣の基礎知識 3 労働者派遣事業と請負の区分

労働者派遣の基礎知識

労働者派遣事業と請負の区別
解説

1. 労働者派遣と請負により行われる事業とを区分する意味

労働者派遣事業の場合、派遣法等の適用を受けます。そこで、派遣法等の適用を免れる目的で、形式的に請負契約を締結し、実質的に派遣事業を行う、いわゆる「偽装請負」が社会問題化しました。

事業の実態から、請負ではなく労働者派遣と認定された場合、派遣元事業主は、労働者派遣事業の許可を得なければならない等、派遣法等の規制を受けます。派遣先は、一定の要件に該当する偽装請負の場合には、労働契約申込みみなし制度が適用されます。

以上から、労働者派遣と請負により行われる事業とをきちんと区分することが必要なのです。

(「偽装請負と労働契約申込みみなし制度」については「派遣先の方へ」QA18を参照。)

2. 請負により行われる事業とは

下図のとおり、請負では、雇用主は請負業者であり、注文主は請負労働者に指揮命令をしない点がポイントです。

請負における請負業者、請負労働者、注文主の関係図

請負により行われる事業とは、次の①及び②のいずれにも該当する場合です。

  1. 次のア~ウのいずれにも該当することにより、自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
    1. 次の(1)及び(2)のいずれにも該当することにより、業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
      1. 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示、その他の管理を自ら行うものであること。
      2. 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示、その他の管理を自ら行うものであること。
    2. 次の(1)及び(2)のいずれにも該当することにより、労働時間等に関する指示、その他の管理を自ら行うものであること。
      1. 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示、その他の管理(これらの単なる把握を除く)を自ら行うものであること。
      2. 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示、その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く)を自ら行うものであること。
    3. 次の(1)及び(2)のいずれにも該当することにより、企業における秩序の維持、確保等のための指示、その他の管理を自ら行うものであること。
      1. 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示、その他の管理を自ら行うものであること。
      2. 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うものであること。
  2. 次のア~ウのいずれにも該当することにより、請負契約により請け負った業務を、自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
    1. 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁するものであること。
    2. 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うものであること。
    3. 次の(1)又は(2)のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
      1. 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理するものであること。
      2. 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理するものであること。

3. 偽装請負と判断される例

    • 例①
    • 発注者が請負業務の作業工程に関して、仕事の順序・方法等の指示を行ったり、請負労働者の配置、請負労働者一人ひとりへの仕事の割付等を決定したりすることは、請負事業主が自ら業務の遂行に関する指示その他の管理を行っていないので、偽装請負と判断されます。
    • 例②
    • 発注者は口頭で直接請負労働者に指示を行っていませんが、発注者が作業の内容、順序、方法等に関して作業指示書を作成し、請負事業主に示して、そのとおりに請負事業主が作業を行っている場合、発注者による指示その他の管理を行わせているので、偽装請負と判断されます。

偽装請負は、労働契約申込みなし制度(「派遣先の方へ」Q18参照)の対象となる「違法派遣」に該当しますので、注意が必要です。

(民法632条、昭和61年労働省告示第37号、37号告示疑義応答集及び疑義応答集第2集)

(弁護士 江上千惠子氏 執筆・補正)

解説