■ 1.紹介予定派遣とは
紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、派遣元事業主が、労働者派遣就業を通じて派遣先に、派遣労働者の職業紹介を行う(ことを予定している)ものです。労働者派遣と人材紹介が一つの事業として認められる制度です。
(派遣法第2条第4号)
職業紹介を伴いますので、紹介予定派遣を行う派遣元事業主は、労働者派遣事業の許可に加えて、職業紹介事業の許可又は届出が必要となります。(職業安定法第30条、第33条)
紹介予定派遣の関係を分かりやすく図示します。
(AはB・Cの雇用関係の成立をあっせんします。)
■ 2.紹介予定派遣の特色
- 紹介予定派遣は、一般の労働者派遣では禁止されている事前面接等、派遣労働者の派遣先による事前の特定ができます。
(派遣法第26条第6項)
派遣先は、労働者派遣期間中に、派遣労働者の業務遂行能力等、社員としての適性を判断することができます。一方で、派遣労働者は、派遣先の就業環境、就業条件、業務内容等、自分に合うかどうかを判断することができ、雇用のミスマッチを防ぐことが期待されているのです。
- 派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等が可能です。
- 当初より、紹介予定派遣として派遣就業が開始された場合でなくても、職業紹介事業者でもある派遣元事業主は、派遣就業期間中に、派遣労働者又は派遣先の希望に応じて、求人条件の明示、求人・求職の意思等の確認を行うことができます。
求人条件の明示等の結果、派遣労働者及び派遣先が、職業紹介を受けることに合意した時点で、当該労働者派遣は紹介予定派遣に該当することになります。したがって、派遣元事業主は、速やかに、従前の労働者派遣契約の変更を行い、紹介予定派遣に必要とされる措置を行うことが必要です。
また、派遣先は、派遣労働者に対して採用内定を行うことが可能です。
■ 3.紹介予定派遣と試用期間
紹介予定派遣と同じように使用者が労働者の適性を判断するための仕組みとして、「試用期間」という制度があります。
しかし、試用期間満了後に本採用を拒否するには、「客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」(三菱樹脂事件 最大判昭48.12.12)と解されており、紹介予定派遣に比べ、採用拒否について厳しい判断がなされると考えます。
なお、紹介予定派遣により雇い入れた労働者については、試用期間を設けないよう、派遣先に対して必要な行政指導を行うこととされています。
(業務取扱要領第8の17の(7)の①)
(弁護士 江上千惠子氏 執筆)