■派遣労働者の安全衛生管理とは
1.派遣労働者の安全衛生管理
派遣労働における安全衛生管理を考える場合、派遣労働者は、その雇用主である派遣元事業主ではなく、派遣先事業主から指揮命令を受けて労働に従事するため、労働者の危険または健康障害を防止するための措置をはじめ、多くの労働安全衛生法上の責任を派遣先事業主が負うこととなるという特徴があります。
2.派遣労働者が派遣中に労働災害に被災した場合
- 派遣元・派遣先事業主は、労働災害の原因を調査し、再発防止対策を講ずる必要があります(安衛法第10条第1項第4号)。
- 労働災害の原因や再発防止対策は、安全委員会等で調査審議する事項です(安衛法第17条第1項第2号)(安衛法第18条第1項第3号)。
- 派遣元事業主は、被災した労働者が労災保険給付の手続を行なうために必要な助力を行ないます(労災保険法施行規則第23条)。
- 派遣元事業主・派遣先事業主の双方がそれぞれ労働者死傷病報告を作成し、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません(安衛規則第97条1項)。
■派遣元・派遣先との連携
- 派遣元と派遣先は、それぞれの責任区分に応じた労働安全衛生法上の措置を講ずる必要があり、これを円滑に実施するためには、両者の適切な連絡調整等が重要です。
- 労働者派遣法では、労働者派遣契約に従って派遣労働者を労働させたときに派遣先が労働安全衛生関係法令に違反することになる場合には、派遣元に対して当該労働者派遣を禁止しています。(派遣法第45条第6項)
■安全衛生係る措置(派遣先)
通達は、派遣先が派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために、次のような必要な協力や配慮を行うことを定めています。
- 派遣先は、派遣元事業主が雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育を適切に行えるよう、派遣労働者が従事する業務に係る情報提供を派遣元事業主に対し積極的に提供するよう努めること…「派遣労働者が従事する業務に係る情報提供」の内容として、例えば、派遣労働者が派遣先で使用する機械・設備の種類・型式の詳細、作業内容の詳細、派遣先の事業場における労働者に対する雇入れ時の安全衛生教育を行う際に使用している教材、資料等が考えられます。
- 派遣元事業主から雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育の委託の申入れが派遣先にあった場合、派遣先は可能な限りこれに応じるよう努めること…当該申入れに応じて派遣先が安全衛生教育を実施した場合には、その実施結果を派遣元事業主に報告するよう努めるべきです。
- 派遣元事業主が健康診断等の結果に基づく就業上の措置を講ずるに当たって、当該措置に協力するよう派遣先に要請があった場合、派遣先はこれに応じ、必要な協力を行うこと 等
(派遣先指針第2の17)
■安全衛生に係る措置(派遣元)
通達は、派遣元事業主が派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために、次のような派遣先と必要な連絡調整等を行う義務を定めています。
- 派遣労働者に対する雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育を適切に行えるよう、当該派遣労働者が従事する業務に係る情報を派遣先から入手すること
- 健康診断等の結果に基づく就業上の措置を講ずるに当たって、派遣先の協力が必要な場合には、派遣先に対して、当該措置の実施に協力するよう要請すること 等
(派遣元指針第2の14)
(弁護士 江上千惠子氏 執筆・補正)
<<前へ
次へ>>