■1. 労働基準法の適用に関する特例
派遣法の原則的な枠組みにおいては、派遣労働者の労働条件は、基本的には、雇用関係のある派遣元事業主と派遣労働者の間で決定されるものです。ただし、派遣法44条2項によれば、派遣労働者の派遣就業に関し、労働時間、休憩、休日に関する労働基準法32条等の規定の適用については、派遣先事業のみを派遣労働者を使用する事業とみなしています。したがって、派遣先は、派遣労働者の始業、終業の各時刻を把握し、労働時間を管理する義務を負っていると解されます。
■2. 派遣元事業主との労働時間等に係る連絡体制の確立
派遣先指針第2の9の(11)(適正な就業環境の維持、福利厚生等)は、派遣先と派遣元事業主との労働時間等に係る連絡体制の確立について次のように規定しています。
「派遣先は、派遣元事業主の事業場で締結される労働基準法第36条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求める等により、派遣元事業主との連絡調整を的確に行うこと。
また、労働者派遣法第42条第1項及び第3項において、派遣先は派遣元管理台帳に派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間等を記載し、これを派遣元事業主に通知しなければならないとされており、派遣先は、適正に把握した実際の労働時間等について、派遣元事業主に正確に情報提供すること。」
(派遣先指針第2の9の11)
以上の指針の規定からいっても、派遣先による労働時間の適正な管理が求められていると解されます。(平成11労働省告示第138号 最終改正:平成30厚生労働省告示第428号)
(弁護士 江上千惠子氏 執筆・補正)