東京都労働相談情報センター

労働者派遣講座

このサイトについて
労働者派遣講座 > 派遣元の方へ > 【3】派遣労働者と労働契約を締結するに当たって Q13 派遣労働者との契約時の就業条件等の明示

派遣労働者と労働契約を締結するに当たって

派遣労働者との契約時の就業条件等の明示
解説

派遣元指針は、派遣元が講ずべき措置として、「労働者派遣契約の締結に当たっての就業条件の確認」として、次のように定められています。
「派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに際しては、派遣先が求める業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準、労働者派遣の期間その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件を事前にきめ細かに把握すること」(派遣元指針第2の1)。
派遣法では、派遣元は、派遣労働者と労働契約を結ぶ前に、当該派遣労働者に対し、派遣労働者である旨を明示し(派遣法第32条)、派遣就業をしようとするときは、あらかじめ、派遣先での就業条件等を書面で明示しなければならないと定めています(派遣法第34条)。

派遣労働者である旨の明示

派遣元事業主は、労働者を雇用しようとするときは、あらかじめ、派遣労働者に対し、派遣労働者である旨を明示しなければなりません(派遣法第32条)。

労働契約の締結

労働契約を締結する際は、契約内容をはっきりさせるため、派遣元は契約期間や賃金、労働時間その他の労働条件について書面で明示し、交付しなければなりません(労基法第15条第1項)。
 厚生労働省では「労働条件通知書」様式を活用して、労働条件等を書面で明示するように勧めています。
また、派遣元は、派遣労働者の希望を考慮して、労働契約の期間を労働者派遣契約における派遣期間と合わせる等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をすることを求められています(派遣元指針第2の2(1))。

(労働法第15条第1項)

(派遣元指針第2の2(1))

(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」労働条件通知書様式)

書面で明示しなければならない就業条件等(派遣法第34条)

労働者派遣契約で定めた次に掲げる事項のうち当該契約により労働者派遣される個々の派遣労働者に係るものを書面により明示することとなります。「就業条件」とは、派遣元と派遣先が締結する「労働者派遣契約」で定めた就業条件の範囲内でなければなりません。

  1. 派遣労働者が従事する業務の内容
  2. 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
  3. 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称、所在地その他派遣就業の場所及び組織単位
  4. 派遣先のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項

    記載例:〇〇部〇〇課総務係長 △△△△△   

  5. 労働者派遣の派遣期間、派遣就業をする日
  6. 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間

    記載例:就業時間 9時から18時まで  休憩時間 12時から~13時まで

  7. 安全及び衛生に関する事項
    危険又は健康障害を防止するための措置、健康診断の実施等健康管理に関する事項、換気・採光・照明等作業環境管理に関する事項、安全衛生教育に関する事項等労働者派遣契約において定めた安全及び衛生に関する事項を明示します。
  8. 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における苦情の処理に関する事項

    記載例:

    1. 苦情の申出を受ける者
      派遣元…派遣事業運営係主任、派遣先…総務部秘書課人事主任
    2. 苦情処理方法、連携体制等…
      1. 派遣元における(1)記載の者が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣元責任者へ連絡し、派遣元責任者が中心となって、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図ることとし、その結果について派遣労働者に通知する。
      2. 派遣先における(1)記載の者が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣先責任者へ連絡し、派遣先責任者が中心となって、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図ることとし、その結果について派遣労働者に通知する。
      3. 派遣元事業主及び派遣先は、自らでその解決が容易であり、即時に処理した苦情の他は、相互に遅滞なく通知するとともに、密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図ることとする。
  9. 労働者派遣契約の解除に当って講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項

    記載例:
    【労働者派遣契約の解除に当って講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るための措置】

    1. 派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、派遣先と連携して、当該派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受けること、派遣元事業主において他の派遣先を確保すること等により、新たな就業機会の確保を図ることとする。
    2. また、派遣元事業主は、労働者派遣契約の解除に当って、新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業等を行い、当該派遣労働者の雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払等労基法等に基づく責任を果たすこととする。
    3. さらに、やむを得ない事由により(1)、(2)ができない場合において、当該派遣労働者を解雇しようとするときにあっても、労働契約法の規定を遵守すること、少なくとも30日前に予告すること、30日前に予告しないときは労基法第20条第1項に基づく解雇予告手当を支払うこと、休業させる場合には労基法第26条に基づく休業手当を支払うこと等、雇用主に係る労基法等の責任を負うこととする。
    1. 紹介予定派遣の場合…①紹介予定派遣である旨 ②紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に予定される業務の内容及び労働条件
    2. 派遣先が雇用しない場合…の理由の明示
  10. 派遣労働者個人単位の受入期間の制限を超える日(抵触日)
  11. 派遣先の事業所単位の受入期間の制限を超える日(抵触日)
  12. 派遣元責任者、派遣先責任者
  13. 派遣先との契約で定めた休日労働させる日、時間外労働させる時間数
  14. 福祉施設等の利用等…派遣元と派遣先との間で、派遣先が派遣労働者に対し、次のような福祉施設等の利用等について定めた場合には、当該便宜供与の事項について
    1. 診療所、保育所、保養施設等の利用(給食施設、休憩室及び更衣室の利用を除く)
    2. レクリエーション等に関する施設又は設備の利用
    3. 制服の貸与
    4. 教育訓練その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を供与する定めをした場合には、当該便宜供与に関する事項

    なお、給食施設、休憩室及び更衣室の利用については、法律上の就業条件の明示事項ではありませんが、派遣法第40条第3項の規定に基づき利用機会を付与しなければならないことに注意して下さい。

  15. 労働者派遣の終了後に労働者派遣契約の当事者間の紛争を防止する措置
    記載例:
    【派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置】
    労働者派遣の役務提供の終了後、当該派遣労働者を派遣先が雇用する場合には、派遣先は、その雇用意思を事前に派遣元事業主に対し示すこと。
     また、職業紹介を経由して行うこととし、紹介手数料として、派遣先は派遣元事業主に対して、支払われた賃金額の〇分の〇に相当する額を支払う。ただし、引き続き6か月を超えて雇用された場合には、6か月館の雇用に係る賃金として支払われた賃金額の〇分の〇に相当する額とする。
  16. 健康保険被保険者資格取得届等の書類が行政機関に提出されていない場合の理由
  17. 派遣期間の制限がない労働者派遣に関する場合
    1. 有期プロジェクト業務の場合、その旨
    2. 1ヶ月間に行われる日数が少ない業務の場合、その旨、1ヶ月の労働日数、他の通常の労働者の1ヶ月の所定労働日数
    3. 産前産後休業、育児休業、介護休業などの代替要員の場合は、休業する労働者の氏名及び業務並びに休業の開始及び終了予定の日
  18. (派遣法第34条)

    (「労働者派遣事業関係業務取扱要領第6の13」)

    労働者派遣に関する料金(雇い入れ時、料金の額の変更時)については、派遣先第34条の就業条件明示事項には規定されていませんが、派遣法第34条の2により明示が義務付けられていますので注意して下さい。明示方法は口頭は駄目ですが、書面の交付に限らず、ファックスやメール等の方法が可能ですし、就業条件明示書に記載する方法でも構いません。

    (弁護士 江上千惠子氏 補正)

    解説