■派遣労働者からの苦情対応について
派遣元事業主は派遣労働者を派遣先で就業させるにあたって、派遣法や労働基準法等に違反することがないよう、適切な対応をとるように配慮しなければなりません(派遣法第31条)。
また、派遣先も派遣労働者を直接指揮命令する者に対して、労働者派遣契約の内容に違反するような業務命令を行わないように、指導しなければなりません(派遣法第39条)。
派遣労働者からの苦情を適切に処理するために、派遣元と派遣先は、あらかじめ派遣労働者からの苦情の申し出を受ける者、苦情の処理を行う方法、派遣元と派遣先と連携体制などについて、労働者派遣契約に定めなければなりません(派遣法第26条)。また、派遣先は派遣労働者の受入に当たって説明会等を実施し、苦情処理の方法等について派遣労働者に説明しなければなりません(派遣先指針第2の7(2))。
■派遣元責任者の職務
派遣元責任者は、派遣社員に対する適正な労務管理を行なうと共に、派遣先との連絡や折衝(交渉)の責任者として、派遣社員に対する助言・指導、及び派遣社員からの苦情処理を行なう法的義務が課されています(派遣法第36条第1項2号、3号)。 具体的には以下の3点を派遣労働者に通知しておくことが義務付けられています。
- 苦情申し出の窓口
- 苦情処理の方法
- 派遣元と連携をはかる体制
派遣元は、労働者を派遣しようとするときには、あらかじめ苦情の処理に関する事項について、就業条件明示書等により明らかにしなければなりませんので、派遣労働者は、派遣就業を開始する前に、派遣元及び派遣先における苦情処理担当者の氏名を確認することができます。
派遣元と派遣先は、実際に派遣労働者からの苦情の申し出を受けた場合には、密接に連携を取り合い、誠意を持って速やかに苦情に対応しなければなりません(派遣法第40条第1項)。
管理台帳の作成
1.派遣元は、派遣元管理台帳を作成し、下記について記載し、保管しなければなりません(派遣法第37条・派遣元指針第2の3)。- 苦情の申し出を受けた年月日
- 苦情の内容及び苦情の処理状況等
2.同様に派遣先も派遣先管理台帳を作成し、下記について記載するとともに、その内容を派遣元に通知しなければなりません(派遣法第42条・派遣先指針第2の7)。
- 苦情の申し出を受けた年月日
- 苦情の内容及び苦情の処理状況
また、派遣労働者が、派遣元、派遣先に苦情を申し出たことを理由に、仕事量を増やす、派遣契約の更新を行わないなどの不利益な取扱いを行うことは許されません(派遣元指針第2の3)(派遣先指針第2の7(2))。
(弁護士 江上千惠子氏 補正)