法律上、派遣元事業主は毎事業年度ごとに労働者派遣事業についての事業報告書や収支決算書等を作成し厚生労働大臣に提出しなければなりません(派遣法第23条第1項第2項)。
この事業報告とは別に、派遣労働者や派遣先等が派遣元を適切に評価し選択することができるように、派遣元事業所の情報を公開することとなっています。これによって、派遣先事業主の透明性を確保し、派遣労働者による派遣元事業主の適切な選択や派遣労働者の待遇改善等に資することが期待されます。
(派遣法第23条第1項・第2項)
(派遣法第23条第5項)
■1.情報提供すべき事項
派遣元事業主は事業所ごとに以下の情報を提供しなければなりません。
- 派遣労働者の数(時点及び単位を明確化する)
- 労働者派遣の役務の提供を受けた者の数(派遣先数)(時点及び単位を明確化する)
- マージン率(2.の計算式により算出)
- 派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項
- 労働者派遣に関する料金額の平均額(一人1日(8時間)当たりの額を整数表記)
- 派遣労働者の賃金額の平均額(一人1日(8時間)当たりの額を整数表記)
- 法第30条の4第1項の労使協定を締結しているか否かの別等
■2.マージン率の計算方法(事業所ごとの前事業年度における実績)
マージン率= | 労働者派遣に関する料金額の平均額 ― 派遣労働者の賃金額の平均額 | ×100 |
労働者派遣に関する料金額の平均額 |
- 平均額は、該当年度における派遣労働者一人一日(8時間)当たりの金額です。
- 平均額の算出は、単純平均ではなく加重平均をしなければなりません。
例えば、1日8時間労働で、1万円の人が二名、3万円の人が一名の場合、
× 単純平均 →(1万円+3万円)÷2
○ 加重平均 →(1万+1万+3万)÷3 - %表示した場合、小数点第2位を四捨五入します(例えば、27.478・・・% → 27.5%)。
■3.情報提供の方法
事業所への書類の備付け、インターネットの利用その他適切な方法(パンフレットの作成や人材サービス総合サイト(http://www.jinzai-sougou.go.jp/)の活用等)により提供すべきです。派遣元指針第2の16「情報の提供」によれば、特に、マージン率及び協定の締結の有無等の情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること、また、労働者派遣の期間の区分ごとの雇用安定措置を講じた人数等の実績及び教育訓練計画については、インターネットの利用その他の適切な方法により関係者に対し情報提供することが望ましいとされています。
■4.提供の時期
事業年度終了後、速やかに(年一度)提供すべきです。
■5.マージン率についての注意事項
いわゆる「マージン」とは、派遣料金額である派遣元事業主の収入から派遣労働者に支払った賃金額を差し引いた額です。派遣元事業主は、このマージンから使用者負担分の社会保険料や有給休暇相当分、通勤交通費、教育訓練費、求人広告費等の支払いと共に、派遣事業を維持運営するための事務所費、人件費等の支出も必要となります。
当然、派遣労働者に対する教育訓練・福利厚生に力を入れている派遣元ではマージン率は高くなり、一概に、マージン率の高低だけで派遣元事業所を比較することはできません。逆に言えば、派遣元としてはマージン率だけでなく適正な評価につながる情報を積極的に公開することが望まれます。
特にマージン率の情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により、広く関係者、特に派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすべきであり、情報公開を積極的に進める観点から、できる限りマージン率の詳細な計算結果を情報提供することが望ましいです。
(弁護士 江上千惠子氏 補正)