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労働者派遣講座 > 派遣元の方へ > 【4】労働者を派遣するとき Q17-2 パワーハラスメント

労働者を派遣するとき

パワーハラスメント
解説

1. パワハラに関する法改正

令和元年5月29日、労働施策総合推進法の改正がなされ(施行:令和2年6月1日)パワハラに関する事業主の措置義務が明記されました。事業主は、職場におけるパワハラを防止するため、方針の明確化や周知・啓発、相談体制の整備、パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応等雇用管理上適切な措置を講じなければなりません。

(労働施策総合推進法第30条の2)

2. パワハラとは

職場におけるパワハラとは、次の(1)~(3)の要素をすべて満たすものです。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
  3. 労働者の就業環境が害されること
    パワハラ指針〔令2.1.15厚生労働省告示5(事業主が職場における優越的な関係を背景として言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)〕は、パワハラの代表的な言動として6類型を挙げていますが、パワハラに該当する「精神的な攻撃」の例として「人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。」とし、パワハラに該当する「個の侵害」の例として「労働者の性的指向・性自認等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。」を挙げています。
    「おかま」とか「ホモ」は、その言葉自体が差別的・侮蔑的に使われてきた歴史や経緯がありますので使うべきではありませんし、侮蔑的な言動としてパワハラに該当します。派遣労働者Xの派遣先社員がXに対し「おかま」とか「ホモは気持ち悪いな。」等、同性愛を茶化すような話をなし、Xが精神的苦痛を受けているというのは、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動として、パワハラに該当します。

3. 派遣におけるパワハラに対する雇用管理上の措置義務

派遣法47条の4は、派遣元事業主のほか、派遣先の使用者も事業主として、派遣労働者に対するパワハラに対する雇用管理上の措置義務を負うと規定しています。
具体的には、次の(1)、(2)の義務を負います。

  1. 職場におけるパワハラの防止のために講ずべき措置(義務)
    • <事業主の方針当該の明確化及びその周知・啓発>
    • ①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること。
    • ②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること。
    • <相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備>
    • ③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
    • ④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること。
    • <職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応>
    • ⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
    • ⑥速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(事実確認ができた場合)。
    • ⑦事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(事実確認ができた場合)。
    • ⑧再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も同様)。
    • <その他併せて講ずべき措置>
    • ⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること。
    • ⑩相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
  2. 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
    事業主は、労働者が職場におけるパワハラについて相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いをすることが禁止されます。

(1)(2)は義務ですが、パワハラ指針では「望ましい取組」(例えば『職場におけるパワハラの原因や背景となる要因を解消するため、コミュニケーションの活性化を図る』等)も定めており、事業主に対し積極的な対応が求められています。

4. 本設問の場合における派遣元の対応

派遣元は3.の措置義務を負いますので、次のような対応を取るべきです。

  1. 派遣元相談窓口は、当該労働者のプライバシーの保護に注意しながら、丁寧な事情聴取をなし正確な事実確認を行うこと。この際、労働者の性的指向・性自認は、機微な個人情報を含みますので、当該労働者の了解を得ないで他の労働者に暴露すること(アウティング)もパワハラに該当することに注意が必要です。
  2. 当該労働者が、派遣先の社員への注意等積極的な対応を求めている場合には、派遣元から派遣先(派遣先責任者が適切)へ連絡・連携を取り、派遣先において、派遣先社員から正確な事実確認をすること、派遣先社員に対する当該言動がパワハラに該当する場合にはパワハラ行為をした派遣先社員に対し厳正に対処すること等適切な対応を取るよう要請すべきです。
  3. 派遣元においても、LGBT対策を取り、ハラスメントが起きないよう予防措置を取るよう進めることが大事です。
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