■ 1. 改正派遣法の目的
不合理な待遇差を解消し、「均等待遇」、「均衡待遇」を実現するため、改正派遣法により規定が整備され、派遣元事業主は、「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれか方式を取ることが法律上義務化されました。これら2つの方式は選択制です。どちらを選択するかは自由ですが、義務違反があると行政による助言・指導・改善命令や許可取消等の可能性がありますので注意が必要です。
■ 2. 派遣先均等・均衡方式
- 派遣先労働者と均等待遇が求められる場合
「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ場合には、派遣労働者に対する差別的取扱いが禁止され、「均等待遇」であることが求められます。
(派遣法第30条の3第2項)
- 派遣先労働者と均衡待遇が求められる場合
(1)の均等待遇が求められる場合以外の派遣労働者の待遇について、派遣先の通常の労働者の待遇との間に不合理な待遇差がないこと、「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」の違いに応じた範囲内で待遇が決定されます。
(派遣法第30条の3第1項)
- 「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」とは
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「職務の内容」…「業務の内容」および「責任の程度」のことで、業務の内容の業務とは職業上継続して行う仕事のことであり、業務の内容は業務の種類(例:販売職、管理職、事務職、製造工、印刷工等)と従事している業務のうちその職種を代表する中核的業務が実質的に同じかどうかで判断します。
「責任の程度」とは、業務の遂行に伴い行使するものとして付与されている権限の範囲・程度(例えば単独で決済できる金額の範囲、管理する部下の人数、決済権限の範囲等)等を勘案して、責任の程度が著しく異ならないかどうかで判断します。 -
「職務の内容・配置の変更の範囲」…「職務の内容の変更」は、配置の変更によるものであるか、業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合のことです。
「配置の変更」は、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。 - その他の事情…例えば、成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労使交渉の経緯等)で、個々の状況に合わせて検討します。
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「職務の内容」…「業務の内容」および「責任の程度」のことで、業務の内容の業務とは職業上継続して行う仕事のことであり、業務の内容は業務の種類(例:販売職、管理職、事務職、製造工、印刷工等)と従事している業務のうちその職種を代表する中核的業務が実質的に同じかどうかで判断します。
- 派遣先均等・均衡方式の場合、派遣先は比較対象労働者の待遇に関する次の情報を提供しなければなりません。
- 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
- 比較対象労働者を選定した理由
- 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む)
- 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的
- 比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項
(派遣法第26条第7項~10項)
■ 3. 労使協定方式
- 労使協定で定めなければならない事項
- 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
- 賃金の決定方法…派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金額となるものであることが必要です。
- 公正な評価に基づく賃金の決定
- 賃金を除く待遇の決定方法
- 段階的かつ体系的な教育訓練の実施
- その他の協定事項…有効期間等
(派遣法第30条の4)
- 労使協定方式の場合、比較対象労働者の選定は不要ですが、派遣先は派遣元に次の2つの情報を提供しなければなりません。
- 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練(派遣法第40条第2項の教育訓練)
- 給食施設、休憩室、更衣室(派遣法第40条第3項の福利厚生施設)
(派遣法第30条の4)
(弁護士 江上千惠子氏 執筆)
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