■1. 承諾・承諾しない旨の意思表示の効力
労働契約申込みみなし制度に基づく申込みについて、派遣労働者が承諾の意思表示をした時点で、労働契約が成立します(意思表示の効力発生時期は、民法の規定に従います)。
違法行為の前に、あらかじめ派遣労働者が「承諾しない」ことを意思表示した場合、労働契約申込みみなし制度が派遣先に対する制裁であることから、当該意思表示にかかる合意については、公序良俗に反し、無効と解されます。
労働契約の申込みをしたものとみなされた後に、承諾するか否かについては、派遣労働者の自由ですので、この時点で「承諾しない」との意思表示をすれば、労働契約申込みみなし制度の適用はされません。ただし、「承諾しない」との意思表示後に、再度違法行為が行われた場合には、新たに労働契約の申込みをしたものとみなされます。したがって、派遣労働者は、再度、承諾するか否かの選択をすることができます。(平成27年9月30日厚生労働省職業安定局長職発0930第13号)
(派遣法第40条の6第1項)
■2. 承諾できる期間
派遣先は、違法行為が終了した日から1年を経過する日までの間は、労働契約申込みみなし制度による当該申込みを撤回できません。したがって、派遣労働者は、当該違法行為から1年間は、承諾することが可能です。
なお、違法行為終了日から1年間、当該派遣先での派遣労働が継続している必要はありません。
派遣先が、この1年の間に承諾又は承諾しない旨の意思表示を受けなかったときは、当該申みは効力を失います。
(派遣法第40条の6第2項、第3項)
(弁護士 江上千惠子氏 執筆)