■増える派遣労働者からの苦情
労働者派遣契約においては、従事する業務の定めと実際に従事する業務との相違、職場の人間関係、仕事のミスマッチなど派遣労働者からの苦情は極めて多く、その内容も複雑化しています。
派遣先は、苦情の内容を派遣元事業主に通知するとともに、派遣元事業主との密接な連携のもとに、誠意をもって、遅滞なく、苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければなりません(派遣法第40条第1項)。
また、派遣労働者から苦情の申し出を受けたことで、その労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないことも規定されています。
派遣先は苦情処理に関して次の点に特に留意すべきです(派遣先指針第2の7)。
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- 派遣先が適切かつ迅速な処理を図るべきである苦情には、セクシャルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント、育児休業・介護休業等に関するハラスメント、パワーハラスメント、障害者である派遣労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情に関するもの等が含まれていることに留意しなければなりません。
- 派遣労働者の苦情が、派遣先の派遣労働者への対処方法のみに起因する場合は派遣先のみで解決が可能ですが、その原因が派遣元事業主にもある場合は、派遣先は派遣元事業主と密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図っていくことが必要です。
- 派遣先の労働組合法上の使用者性に関する代表的な裁判例や中央労働委員会の命令に留意すること。
- 派遣先は、派遣契約の中に苦情の申し出を受ける者、苦情の処理をする方法、派遣元と派遣先の連携を図るための体制などを定めること。
- 派遣労働者の受入れに際し、説明会等を実施して、その内容を派遣労働者に説明すること。
- 派遣先管理台帳に苦情の申し出を受けた年月日、苦情の内容及び処理状況を、申し出を受け、または処理した都度、記載するとともに、その内容を派遣元に通知すること。
(派遣法第40条第1項)
(派遣先指針第2の7)
■派遣労働に関するトラブルは
派遣労働においてトラブルや疑義があった場合は、派遣労働者は派遣元と派遣先に置かれている「派遣元責任者」「派遣先責任者」に申し出ることになります。また派遣元と派遣先は、あらかじめ派遣労働者から苦情の申し出を受ける者(派遣元苦情処理担当者及び派遣先苦情処理担当者)を選任しておかなければなりません。
また、派遣元、派遣先の両者で苦情の処理を行なう方法などについて、労働者派遣契約で定めることとなっています。
(派遣法第36条1項3号)
(派遣法第41条1項3号)
(弁護士 江上千惠子氏 補正)