■1. 保険への加入状況を通知しなければならない理由
派遣労働者を派遣先に、いつ、どのように派遣労働者するかは派遣元事業主が決定し、派遣先は、当該派遣元事業主が定めた派遣労働者を当該派遣労働者に係る派遣就業の条件に従って就業させるのが原則です。
しかし、派遣労働者の保険未加入が問題となっており、労働・社会保険の適正な加入を担保するために、派遣法は、労働・社会保険の加入状況やその変更について、派遣元事業主に、その旨を派遣先に通知する義務があることを規定したのです。
(派遣法第35条)
■2. 通知すべき事項
派遣元事業主は、派遣先に対し、派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無を通知しなければなりません。「無」の場合は、その具体的な理由を付して通知しなければなりません。
具体的な理由としては、「1週間の所定労働時間が15時間であるため」等、適用基準を満たしていないことが具体的にわかるように通知しなければなりません。単に「適用基準を満たしていないため」とか「被保険者に該当しないため」と記載するのでは足りません。
また、被保険者資格の取得届の手続中である場合にあっては、単に「手続中であるため」と記載するのでは足りません。「現在、必要書類の準備中であり、○年○月○被には届出予定」等、手続の具体的な状況を記載することが必要です。
(派遣法施行規則第27条第2項)
■3. 加入の事実が分かる資料の提示義務
派遣元事業主は、派遣先に対し、当該派遣労働者に係る被保険者証等の写し等保険に加入させていることがわかる資料を提示する義務があります。
なお、被保険者証等の写し等を提示する場合は、原則として労働者本人の同意を得る必要があります。同意を得られなかった場合には、生年月日、年齢等を黒塗りするとともに、派遣先に確認後には派遣元に返送することを依頼する等個人情報の保護を配慮する必要があります。
(派遣法施行規則第27条第4項)
■4. 派遣労働者への通知義務
派遣元事業主は、労働・社会保険に加入していない具体的理由を、当該派遣労働者に対しても通知することが必要ですので、注意が必要です。
(派遣法第34条第1項第2号)
(派遣法施行規則第26条の2)
(弁護士 江上千惠子氏 執筆)