■1. 派遣元責任者選任義務
派遣元事業主は、適正な雇用管理を確保するため、派遣先で就業することとなる派遣労働者に係る派遣元事業主の雇用管理上の責任を一元的に負う「派遣元責任者」を選任する義務があります。
(派遣法第36条、第6条)
派遣元責任者は、派遣元責任者講習の修了等雇用管理能力等について一定の基準を満たすことが必要です。
■2. 派遣元責任者の職務
派遣元責任者は、雇用管理上広範にわたる職務を行う義務があります。具体的は 次の①~⑩に掲げる職務を行わなければなりません(派遣法第36条)。
- 派遣労働者であることの明示等
- 就業条件の明示
- 派遣先への通知
- 派遣元管理台帳の作成、記載及び保存
- 派遣労働者に対する必要な助言及び指導の実施
- 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理
- 派遣先との連絡・調整
- 派遣労働者の個人情報の管理に関すること
- 当該派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の機会の確保に関すること
- 安全衛生に関すること…派遣労働者の安全衛生に関し、当該派遣元事業所において労働者の安全衛生に関する業務を統括する者及び派遣先と必要な連絡調整を行うこと。
■3. 派遣元責任者の選出方法
当該事業所の労働に従事する派遣労働者の数について1人以上100人以下を1単位とし、1単位について1人以上ずつ選任しなければなりません。
物の製造の業務に労働者派遣をする事業所等にあっては、物の製造の業務に従事させる派遣労働者の数について1人以上100人以下を1単位とし、1単位について1人以上ずつ「製造業務専門派遣元責任者」を選任しなければなりません。ただし、「製造業務専門派遣元責任者」のうち1人は、物の製造の業務に労働者派遣をしない派遣労働者をあわせて担当することができます。
Qの事例は、物の製造の業務に従事させる派遣労働者の数が150人⇒2単位⇒製造業務専門派遣元責任者を2人以上選任することが必要です。一方、物の製造の業務以外の業務へ派遣されている派遣労働者の数が150人⇒2単位⇒派遣元責任者を2人以上選任することが必要となりますが、製造業務専門派遣元責任者のうち1人については、物の製造の業務以外の業務へ派遣されている派遣労働者をあわせて担当することができますので、1人の選任で足ります。
(弁護士 江上千惠子氏 執筆)