パート社員を活用している事例を知りたい
3.トラブルを起こさないために
小売業…雑貨販売店/従業員数:約7000人(うちパート社員6000人)
パート社員用の就業規則をつくることでトラブルを防ぐ
■パート社員用の就業規則を作成
C社には、正社員用とパート社員用の2つの就業規則があります。就業規則を雇用形態別に定めていると、トラブルの予防につながると考えたからです。たとえば、正社員用の就業規則のみ制定し、パート社員の就業規則が整備されていなかった場合には、パート社員から「正社員にはボーナスが支給されているのに、なぜパート社員には支給されないのか」と言われるかもしれません。
こうしたトラブルを防ぐには、パート社員用の就業規則を作成し、その中で賞与の支給の有無などを定めておくことが重要です。
もし、パート社員用の就業規則がなく、労働条件通知書に「正社員の就業規則を準用する」などと記載してしまうと、パート社員に正社員の就業規則を周知しなければなりませんし、正社員の就業規則のなかのパート社員に適用しない条項には「ただし、○○はパート社員には適用しない。」という記載をいちいちすることになります。
また、パート社員用の就業規則を別途定めると正社員用の就業規則に規定しているものの、実際には定められていない場合には、就業規則作成義務違反となります。10人以上の事業場では、そこで働く労働者がいずれかの就業規則の適用を受けることが出来るように、就業規則を定める必要があるからです。それらは一体として定めることもできますが、理解しやすさを考えると、雇用形態別に定めた方がよいでしょう。
■パート就業規則作成の手続
C社では、パート社員用の就業規則の作成にあたって、当該事業場の過半数代表者の意見を聴くにとどまらず、パート社員の過半数代表者の意見を聴取して作成しました。これはパートタイム・有期雇用労働法に基づく手続きです(第7条の努力義務)。パート社員の過半数代表者の選出の過程では、労働条件や仕事の進め方について、パート社員間での議論が活発になされたようです。パート就業規則の作成を通して、職場でパート社員の意見を反映させる職場風土が生まれ、仕事の面でもよい影響がありました。
■就業規則作成は労使双方にとって有用
パート社員用の就業規則を作成しておくことは、会社にとってよい効果をもたらします。就業規則で会社と従業員双方の権利と義務を明確にし、きちんとした会社であることをアピールできれば、従業員との信頼関係の構築や良い人材の確保につながるからです。
■就業規則の周知
パート社員用の就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し,または備え付けること,書面を交付すること、コンピュータなどで常時閲覧可能な状態にしておくこと等、労働基準法施行規則(労基則)で定める方法によって,労働者に周知させなければなりません(労働基準法106条)。周知の方法は、労働基準法施行規則52条の2により、以下のいずれかによることとされています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること(パソコン、社内LANなどによる周知)
令和6年4月1日に施行された労働基準法施行規則5条の改正に合わせて、厚生労働省が公表した「モデル労働条件通知書」では、「就業規則を確認できる場所や方法」を記載する欄が設けられています。