パート社員を活用している事例を知りたい
10.労働条件の明示と説明
サービス業…飲食/従業員数:約10人(うちパート社員8人)
採用および更新時には労働条件を文書で交付してトラブルを防止
■採用・更新に当たって労働条件を明示する
飲食店を経営するI社では、パート社員の採用時及び更新時に行っていることがあります。
まず、本人に適用になる労働条件について、労働条件通知書をはさんで、店長がパート社員に説明をします。そのうえで、パート社員からの質問などに懇切丁寧に説明をします。賃金について、昇給や賞与、退職金の有無については、パートタイム・有期雇用労働法に基づき、説明をします(正社員とパート社員との間で、職務内容や責任の重さ、転勤の有無などについて相違がある当社では、パート社員の昇給や賞与・退職金制度はないので、その旨を説明します)。また、パート社員は期間の定めのある契約(6ヶ月契約)で雇用していることから、労働条件通知書には、期間の定め、更新の有無、更新基準、更新・雇止めに際しての予告制度等を記載し、店長に説明をさせています。
■文書交付・保管の重要性
労働条件通知書は、必ず3通を作成し、1通はパート社員に交付します。1通は店長のもとにおきます。もう1通は本社の人事管理部門で保管をします。労働者、職場、管理部門のそれぞれ契約書がありませんと、なにかトラブルが生じたときに、対応が遅れてしまうことになります。パート社員の中には、時間外労働ができないとか、休日出勤は極力避けたいという方もいらっしゃいます。個別の契約内容を直属上司である店長も知っていないと、時間外労働免除の特約のパート社員なのに店長が残業を命じてしまうといったトラブルも生じます。そこで、店長にも個々人の契約内容を十分理解しておいてもらうことが重要です。
■中間管理職の法令理解の重要性
年に2回の店長会議では、パートタイム・有期雇用労働法などの労働関連法令のレクチャーの時間を設けます。また、就業規則や、処遇の決定などに関するデータも示して、店長に管理者としての意識をもってもらっています。パート社員に日々接する店長が、法令や制度を理解していないと、トラブルが生じるからです。
以前、こういう問題が生じました。あるパートに、店長が、勤務態度や勤怠状況が悪いことを指摘して雇止めの予告をしたところ、「前回の契約更新のときは、『契約期間なんて、あってないようなものですよ。更新手続なんて本社がうるさいからやっているだけだ。』といわれた。」と居直ったのです。
そこで、パート社員の労働契約を締結・更新するときには、「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」により契約期間満了後に契約更新の有無を明示すること、また、その判断基準を文書等で明示することを社内で徹底することにしました。
上記のような雇止めによるトラブルを未然に防ぐには、こうしたことをパート社員にはっきり明示することが大切だと思います。上記の例では「勤務態度、勤怠状況によって雇止めにすることがある」と労働条件通知書に記載していたにもかかわらず、予断を抱かせるようなことを店長がいってしまったのが、トラブルの原因となっていました。いまは法令に則して全店舗に書面交付と説明を徹底しています。
■雇止め法理
期間の定めのある労働契約は、契約期間の満了によって当然に終了することを契約内容とするものです。しかし、労働契約法第19条は、1回以上、有期労働契約を更新した場合であって、次の@Aのいずれかに該当するものについて、労働者が更新を希望した場合には、その雇止めが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で更新したものとして取り扱うこととしました。
@過去に反復更新された有期労働契約の期間の定めのある契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合。
A労働者において、有期労働契約の契約期間満了時にその有期労働契約について更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合。
@またはAに該当する場合には、労働者が期間満了までに(又は満了後遅滞なく)有期労働契約の更新の申込みをしたときは、使用者が雇止めをすることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の労働契約と同一の労働条件で、当該申込みを受諾したものとみなすとしており(労働契約法第19条)、その結果として同一内容で更新されたものと扱われることになります。