パート社員を雇う際のルールを知りたい
募集と採用のルール
求人方法と求人時の労働条件明示のルール
パート社員(※)の採用にあたって、どのような労働条件で、どのように仕事をしてもらうか、適切な採用・人材育成プランを立てミスマッチを防ぐためには、募集に際し求める人材像の共有が重要です。
(※)ここでは短時間労働者をパート社員と表記します。
求人活動には、求人者がポスター、チラシ、インターネット等で直接募集するほか、国の機関である公共職業安定所(ハローワーク)が行う無料職業紹介、学校等が行う無料職業紹介、民間職業紹介業者が行う有料職業紹介などを利用する方法があります。いずれの場合についても職業安定法その他の法律を守らなければなりません。求人に際し利用する民間人材サービスには、あっせんを行う「職業紹介事業」のほかにも、「求人メディア」「人材データベース」など、募集情報等を提供する事業(募集情報等提供事業)があります。厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」では、国内全ての職業紹介事業者に関する情報を確認・検索できます。)
そして職業安定法では、インターネットやSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています(職業安定法第5条の4求人等に関する情報の的確な表示)。労働者を募集する際には、募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金を表示する必要があります。
また、求人者は、労働者を募集する際、求職者に対して、書面(又は電子ファイル)によって次の労働条件を明示しなければなりません(職業安定法5条の3、同施行規則4条の2)。
①労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
②労働契約の期間に関する事項
③試みの使用期間に関する事項
④就業の場所に関する事項
⑤始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日に関する事項
⑥賃金(臨時に支払われる賃金、賞与等を除く。)の額に関する事項
⑦健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険の適用に関する事項
⑧労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項
⑨労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨(派遣の場合)
⑩就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項
⑪従事すべき業務の変更の範囲
⑫就業場所の変更の範囲
⑬有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)
もし、当初明示した労働条件と労働契約の締結に際し示す労働条件とが異なる場合(当初の明示の範囲内で労働条件を特定する場合、当初の明示の労働条件を削除する場合、当初明示していない労働条件を新たに提示する場合を含む)には、改めて書面交付の方法で労働条件を求職者に明示しなければなりません。さらに、面接等の過程で労働条件に変更があった場合、求人者等は速やかに求職者に知らせるよう配慮が必要です。
一定の理由で応募者を募集・採用から排除することは、法律に違反する差別として禁止されています。
禁止される差別的取扱いとは
採用の自由と公正な採用
採用は、基本的に使用者の営業の自由に属し、契約の自由(相手方選択の自由、契約内容の自由)が適用されるものの、すべての採用基準を使用者の自由に委ねると、雇用機会の不平等が生じるおそれがあるため法令により一定の制限が設けられています。パート社員の採用に際しても適用されますので注意しましょう。
性差別の禁止
募集・採用の際の次のような差別的取扱いは、男女雇用機会均等法違反となります。
- 募集・採用にあたって、男女のいずれかを排除すること
- 募集・採用の条件を男女で異なるものにすること
- 採用選考の方法や基準について男女で異なる取扱いをすること
- 募集・採用において、男女のいずれかを優先すること
-
求人内容の説明等、募集・採用に係る情報の提供について、男女で異なる取扱いをすること
たとえば「主婦パート募集」とか「男子学生アルバイト募集」といった求人の表記は均等法に違反することになります。
年齢差別の禁止
募集・採用にあたっては、原則として年齢により差別してはなりません。(労働施策総合推進法9条)
ただし、定年年齢を上限とする場合、労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合(18歳未満の深夜業、危険有害業務の禁止等)、新卒採用の場合(無期雇用に限る)、技能・ノウハウの継承の観点から特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定する場合(無期雇用に限る)、芸術・芸能の分野等は、例外も認められています。
この年齢制限の禁止は、ハローワークに求人申込みを行うときだけでなく、民間の職業紹介事業者や新聞広告、事業主が自ら募集・採用を行う際にも適用されます。
なお、求人票は年齢不問としながらも、年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定したりする行為は同法の趣旨に反します。
事業主は、募集・採用の際、労働者に求められる能力、経験、技能の程度などの事項をできるだけ明示しましょう。
障害者差別の禁止と障害者雇用率制度
事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならず(障害者雇用促進法34条)、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはなりません(同法35条)。事業主が守るべき事項は、「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平27.3.25厚労告116号)に定められています。
事業主は労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければなりません。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでありません(同法36条の2)。具体的な留意事項は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平27.3.25厚労告117号)において示されています。
これらはパート社員の募集・採用に際しても適用されますのでご留意ください。
使用者は、その雇用する全従業員のうち、一定割合(障害者雇用率)の障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)を雇用することが義務付けられています(障害者雇用促進法43条)。この障害者雇用率が適用されるのは、民間では40.0人以上の従業員を雇用する事業主です。障害者雇用率は、民間では2.5%、国・地方公共団体等では2.8%です(令和8年7月以降は、民間企業は2.7%、地方公共団体等は3.0%に引き上げられることになっています)。
公正な採用選考に向けて
日本国憲法は、基本的人権の一つとして全ての人に「法の下の平等」と「職業選択の自由」を保障しています。
「職業選択の自由」は、誰でも自由に自分の適性・能力に応じて職業を選べるということですが、この「職業選択の自由」の精神を実現するためには、ごく限られた人にしか門戸が開かれず、人種、信条、性別、社会的身分又は門地など本人の適性・能力以外のことを採用基準とするなどの不合理な理由で就職の機会が制限されない「就職の機会均等」の実現が不可欠です。
東京都では、「就職の機会均等」を確保するために、応募者の基本的人権を尊重した「公正な採用選考」を実施するよう事業主の皆様方に御協力と御努力をお願いしています。事業主の皆様方におかれましては、公正な採用選考の考え方について御理解いただき、パート社員についても、差別のない公正な採用選考の実施に向けて積極的な取組をお願いいたします。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/kosei/
- 使用者は、労働者の募集に当たり、求職者が提供する個人情報について、業務の目的の範囲内で収集、保管、使用しなければなりません(職業安定法5条の4)。
- 労働組合に入っていることや労働組合の正当な活動を理由として不利益に取り扱うことは労働組合法で禁止されています。
年少者の採用にあたって
高校生等の満18歳未満の年少者(以下「年少者」という。)をアルバイト等として採用する場合、労働基準法の年少者の保護規定を守らなければなりません。
未成年者(18歳未満)との労働契約は、本人が結ばなければならず、親や後見人が代わって結ぶことはできません。また、年少者が労働契約を結ぶ際には、法定代理人(親権者・後見人)の同意・許可が必要とされ、同意・許可なしで締結された労働契約は取り消すことができます。親権者等との同意・許可を得て本人が締結した労働契約であっても、親権者・後見人又は行政官庁は、労働契約が年少者に不利であると認める場合は、将来に向かってこれを解除することができます。
使用者は、事業場に、年少者の年齢を証明する公的な書類(住民票記載事項証明書等)を備え付けなければなりません。
【厚生労働省:高校生等を使用する事業主の皆さんへ】
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/040330-8.html
また、東京都では、毎年、「これだけは知っておきたい働くときの知識 高校生版」を発行しています。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/hikkei_koukou/index.html
外国人の採用にあたって
外国人は、出入国管理及び難民認定法で定められている在留資格の範囲内において、我が国での活動が認められています。この在留資格においては、就労活動に制限がない資格(出入国管理及び難民認定法上の永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法上の特別永住者)のほか、技能、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、法律・会計業務、高度専門職など、定められた範囲で就労が認められる在留資格が存在します。
外国人の採用に当たっては、あらかじめ、在留資格上、就労することが認められる者であるかを在留カード等で確認するとともに、不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにすることが必要です。
留学や家族滞在の在留資格については、あらかじめ入国管理局において資格外活動許可を受けている場合には、週28時間の範囲で就労することが可能(留学の在留資格で資格外活動許可を受けている者は、夏休みなど学校の長期休暇期間は週40時間まで就労が可能)です。留学や家族滞在の在留資格を有する者をアルバイトやパート社員として雇い入れようとする場合は、資格外活動許可を受けていることを在留カード等で確認しましょう。
原則として、日本国内で就労する限り、労働者の国籍に関係なく日本の労働法が適用されます。また、労働基準法3条は「使用者は、労働者の国籍等を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定め、「国籍」を理由とする差別を禁止しています。
外国人を雇用する使用者が遵守すべき法令や、努めるべき雇用管理の内容などを盛り込んだ「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を定めています。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)に基づき、外国人を雇用する事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」、「公用」及び特別永住者を除く)の雇入れ及び離職の際には、雇用保険の被保険者となる外国人については雇用保険の手続きを行い、被保険者でない外国人については、氏名、在留資格、在留期間、国籍・地域、在留カードの番号等を記載した「外国人雇用状況の届出」を、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に届け出なければなりません。