第5 裁判外紛争解決手続(行政ADR)
派遣元事業主、派遣先とも、自主的な解決が困難な場合、次の行政による裁判外紛争解決手続が整備されました。
1 都道府県労働局長による助言・指導・勧告
都道府県労働局長による助言・指導・勧告は、具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促すものであり、紛争の当事者にこれに従うことを強制するものではありません。
(1)派遣元事業主
下記事項についての派遣労働者と派遣元事業主との間の紛争について、都道府県労働局長に助言・指導・勧告の権限を与えました。
- 派遣先均等・均衡方式(派遣法第30条の3)
- 労使協定方式(派遣法第30条の4)
- 雇入れ時の説明(派遣法第31条の2第2項)
- 派遣時の説明(派遣法第31条の2第3項)
- 派遣労働者から求めがあった場合の説明(派遣法第31条の2第4項)
- 不利益な取扱いの禁止(派遣法第31条の2第5項)
(2)派遣先
下記事項についての派遣労働者と派遣先との間の紛争について、都道府県労働局長に助言・指導・勧告の権限を与えました。
- 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施(派遣法第40条第2項)
- 給食施設、休憩室及び更衣室の利用の機会の付与(派遣法第40条第3項)
(3)不利益取扱いの禁止…派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者が都道府県労働局長に紛争の解決の援助を求めたことを理由として、派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはなりません。
2 紛争調整調停委員会による調停
(1)派遣元事業主
下記事項についての派遣労働者と派遣元事業主との間の紛争について、都道府県労働局長が申請された調停を必要と認めるときは、調停を行わせます。
- 派遣先均等・均衡方式(派遣法第30条の3)
- 労使協定方式(派遣法第30条の4)
- 雇入れ時の説明(派遣法第31条の2第2項)
- 派遣時の説明(派遣法第31条の2第3項)
- 派遣労働者から求めがあった場合の説明(派遣法第31条の2第4項)
- 不利益な取扱いの禁止(派遣法第31条の2第5項)
(2)派遣先
下記事項についての派遣労働者と派遣先との間の紛争について、都道府県労働局長が申請された調停を必要と認めるときは、調停を行わせます。
- 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施(派遣法第40条第2項)
- 給食施設、休憩室及び更衣室の利用の機会の付与(派遣法第40条第3項)
(3)不利益取扱いの禁止…派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者が都道府県労働局長に調停の申請をしたことを理由として、派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはなりません。
(弁護士 江上 千惠子 氏 執筆)