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労働者派遣講座 > 平成30年派遣法改正のポイント > 2-2 派遣先均等・均衡方式

2-2 派遣先均等・均衡方式

(1)派遣先均等・均衡方式と労使協定方式との関係

2-2の「派遣先均等・均衡方式」と2-3の「労使協定方式」は選択制ですが、労使協定が締結されていない場合は、2-2の「派遣先均等・均衡方式」となります。また、労使協定を締結していても、その労使協定が適切な内容で定められていない場合や労使協定で定めた事項を遵守していない場合には、「労使協定方式」は適用されず、「派遣先均等・均衡方式」が適用されます。

(2)「均等待遇」と「均衡待遇」の違い

①均等待遇

派遣法第30条の3第2項は、次のように定めています。
「派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であって、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配慮が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない。」

上記条文のポイントは、待遇決定に当たって、派遣労働者が派遣先の通常の労働者と同じに取り扱われること、つまり派遣労働者の待遇が派遣先の通常の労働者と同じ方法で決定されることが義務付けられていることです。

派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で「均等待遇」であることが求められる場合…ア「職務の内容」イ「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ場合には、派遣労働者に対する差別的取扱いが禁止され、「均等待遇」であることが求められます。
(ア・イの詳細は、(3)を参照)

具体的には、基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全衛生、災害補償等の全ての待遇について、当該待遇に対応する派遣先の通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはなりません。

なお待遇の取扱いが同じであっても、派遣労働者と派遣先に雇用される通常の労働者について査定や業績評価等を行うに当たり、意欲、能力、経験、成果等を勘案することにより、それぞれの賃金水準が異なることは、通常の労働者の間であっても生じることであって問題とはなりません。当然、当該査定や業績評価は客観的かつ公正に行われるべきです。

②均衡待遇

派遣法第第30条の3第1項は次のように定めています。
「派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」

上記条文のポイントは、①の均等待遇が求められる場合以外の派遣労働者の待遇について、派遣先の通常の労働者の待遇との間に不合理な待遇差がないこと、つまり次のア~ウの違いに応じた範囲内で待遇が決定されるということです。

ア 「職務の内容」

イ 「職務の内容・配置の変更の範囲」

ウ 「その他の事情の違い」

(3)ア「職務の内容」・イ「職務の内容・配置の変更の範囲」・ウ「その他の事情」の意味

ア 「職務の内容」…a「業務の内容」およびb「責任の程度」のことです。
a業務の内容…業務とは職業上継続して行う仕事のことであり、業務の内容は業務の種類(例:販売職、管理職、事務職、製造工、印刷工等)と従事している業務のうちその職種を代表する中核的業務が実質的に同じかどうかで判断します。
b「責任の程度」…業務の遂行に伴い行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等(下記例参照)を勘案して、責任の程度が著しく異ならないかどうかで判断します。

<付与権限の例>

イ 「職務の内容・配置の変更の範囲」…将来の見込みも含め、転勤、昇給といった人事異動や本人の役割の変化等の有無や範囲のことです。「職務の内容の変更」は、配置の変更によるものであるか、業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合のことです。「配置の変更」は、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

<「配置の変更の範囲が」異なる例>

ウ その他の事情…ア及びイ以外の事情(例えば、成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労使交渉の経緯等)で、個々の状況に合わせて検討します。