第5 均衡待遇の推進
1 概要
派遣労働者と、派遣先での同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、改正前派遣法は、派遣元事業主と派遣先に、それぞれ講ずべき義務が定められていました。改正法では更に待遇の均衡を推進するために、以下2、3の義務が新設されました。
2 派遣元事業主が講ずべき措置
(1)待遇に関する事項等の説明義務
派遣元事業主は、派遣労働者が希望する場合には、均衡待遇の確保のために考慮した内容を本人に説明する義務があります。(派遣法第31条の2)
(2)派遣先の労働者との均衡に配慮した取扱い
〈派遣元指針第2‐8‐?イ~ヘ〉は、派遣先の労働者との均衡に配慮した取扱いについて細かく定めています。そのうち、特に以下の定めは均衡待遇の推進する上で重要と思われます。
ア 派遣元事業主は、派遣労働者の賃金の決定にあたって、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮しつつ、一般労働者の賃金水準、職務の内容、能力、経験等を勘案するよう努めること、また派遣労働者の職務の成果、意欲等を適切に把握し、職務に応じた適切な賃金を決定するよう努めること。
イ 派遣元事業主は、派遣先との派遣料金の交渉が派遣労働者の待遇改善にとって極めて重要であることを踏まえ交渉に当たるよう努めること。
ウ 派遣元事業主は、派遣料金が引き上げられたときは、できる限りそれを派遣労働者の賃金の引き上げに反映するよう努めること。
3 派遣先が講ずべき措置
(1)派遣元への情報提供等に関する配慮義務
派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者の賃金等を適切に決定できるよう、派遣元から求めがあった場合、必要な情報の提供等をなすよう配慮しなければなりません。改正前は、「努力義務」として規定されていましたが、改正により「配慮義務」となり、努力義務より厳しくなり、何らかの対応が必要となります。配慮義務の具体的内容は、以下ア~ウのとおりです。
ア 賃金水準の情報提供の配慮義務
派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者の賃金を適切に決定できるよう、必要な情報を提供するよう配慮しなければなりません。必要な情報は、例えば、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準や一般の労働者の賃金水準(賃金相場)、派遣先の労働者の募集時の求人条件等が挙げられます。(派遣法第40条5項)
イ 教育訓練の実施に関する配慮義務
派遣先は、派遣先の労働者に対し業務と密接に関連した教育訓練を実施する場合、派遣元事業主から求めがあったときは、派遣元事業主で実施可能な場合を除き、派遣労働者に対してもこれを実施するよう配慮しなければなりません。(派遣法第40条2項)
ウ 福利厚生施設の利用に関する配慮義務
派遣先は、派遣先の労働者が利用する福利厚生施設については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければなりません。(派遣法第40条3項)
(2)派遣料金の額の決定に関する努力義務
派遣先は、派遣料金の額の決定に当たっては、派遣労働者の就業実態や労働市場の状況等を勘案し、派遣労働者の賃金水準が、派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準と均衡の図られたものとなるよう努めなければなりません。また、派遣先は、労働者派遣契約を更新する際の派遣料金の額の決定に当たっては、就業の実態や労働市場の状況等に加え、業務内容等や要求する技術水準の変化を勘案するよう努めなければなりません。〈派遣先指針第2‐9‐?)